Business Boot Camp 2016 session 06

いよいよ最終セッション。日野市主催「変革力」強化プログラム「ビジネス・ブートキャンプ」は、10月にスタートしてから3ヶ月、ぎゅうぎゅう詰めのコンテンツを次々とこなして、全6回。毎回、時間をいっぱいまで費やしながら、時折り予定の時間を超過してしまいながら、息せき切って進んで来ました。

最後のセッションは「デザイン・プラクティス」の後半戦、ジャーナリング。組み上げて来たプランを一人ひとりプレゼンテーション。総掛かりでブラッシュアップする時間です。今回は、ブートキャンプの参加者に3人のコーチが加わって、一つひとつのプランを厳しくチェックします。コーチをお願いしたのは、地域や環境など社会課題に関わる分野で多くの事業開発の実積を持つおふたり、株式会社budoriの有村正一さんと株式会社タウンキッチンの北池智一郎さん、そして、日野市役所・地域戦略室の中平健二郎さん。初めてセッションに加わるので、客観的な視点での評価が得られます。

全員のプランをジャーナリングするわけなので、明らかに時間は足りません。予め、普段のセッションより1時間長い時間割にしているのですが、それでも時間内に収まるかどうか……。ということで、最初のブリーフィングもそこそこ、グループごとに、宿題で仕上げて来た一人ひとりのプレゼンテーション・シートを最終チェック。シートの形式は自由。思い思いに形にして来た各自のプランを、グループごとにチェックして行きます。時間が少ないので脇目も振らず、持ち寄ったシートについて代わるがわる意見を交換。解りにくいところや足りないところがないか検証します。

どうやら、一人ひとり個性的なプレゼンテーションを用意して来ているようです。シート全体にイラストが描かれていたり、フローチャートで表現されていたり、独自にスライドを作成したり、小道具を使ったり、みなさんそれぞれ、自分の得意な手法でプレゼンテーションに臨む様子。フォーマットに則って不備なく要件を満たした企画シートとはちょっと違う、みんなバラバラでちょっとデコボコだけど、楽しみなシートが作成されています。しかしながら、発表されるプランは具体的でなければなりません。どんな表現方法であっても、アイディアの強度や精度は厳しくチェックされます。みなさん、それぞれの自由な表現で、そのチェックを通過してゴールへ向かうのです。

グループで最後の詰めを終えたら、各自そこで指摘されたことを反映させてプレゼンテーション・シートを仕上げます。これも、限られた短い時間の中で、プレゼンテーションに使えるレベルまで完成させなければなりません。しばし無言の時間。完成した人から逐次シートを提出。プレゼンテーションのためにデータ化したり、配布資料にしたり、着々と準備は進みます。

全員が提出し終わったところで、準備が整うまでの少しの時間、コーチとして参加してくれる有村さんと北池さん、それぞれの事業を紹介するプレゼンテーション。有村さんの会社・budoriは、ウェブやグラフィックのデザインを軸に、様々な社会課題に起因する事業のプロデュースやディレクションを全国各地で手がけている。北池さんのタウンキッチンは、地域にぐいっとフォーカスして、現代の地域社会の問題を解決する新しいプラットフォームを、あちこちで次々と生み出している。いずれも、社会課題をビジネスで解決する仕組みを、課題の当事者が自分で考えて取組めるようにデザインするのが、共通する手法。自分たちのプランを評価する人が、どんな考え方で事業を行なっている人なのか、参加者のみなさんにも納得していただけたのでは。

全員のシートをすべてデータにしてプロジェクターに格納。配布資料も揃って、総動員ジャーナリングの準備完了。プレゼンテーションが始まります。ひとりずつ順番に12人。最初に10分程度でプランを説明し、そのプランに対して全員でジャーナリング、評価を加えて行く。およその目安として一人当たり20分から長い人で30分とはするも、時間を均一に区切るのではなく、それぞれの状況に合わせて、一つひとつ充分なジャーナリングがなされるように進める。すんなり終わる人もいれば、長くかかる人もいるでしょう。進めて行ってみなければ分からないけれど、際限なく時間があるわけではない。とても骨の折れるプロセスが始まりました。

早速、厳しい指摘が飛び交います。そのアイディアに必然性はあるのか?その姿勢で通用するものなのか?成立する根拠はどこにあるのか?その言葉で伝わるのか?次々と指摘されて行きます。けれど、これからの社会にあって欲しい考え方、未来のためにあって欲しい取組み、それぞれのアイディアの基層にある大切な部分には賛意が集まり、様々な見地から実現するためのアドバイスが加えられます。

コーチの有村さん、北池さんは、多岐にわたる分野でいろいろなレベルの事業プランと接して来た経験から、どのプランにも的確な批評を提示してくれます。行政の立場でいろいろな事業事例を見て来ている中平さんからは、社会が進むべき方向、未来へ向けたビジョンの伺える見解が示されます。これまでのセッションでアイディアを共有して来たのではない、初めて加わった、ある種、無責任な立場からの意見は、ジャーナリングにはとても重要。時折、プランの根本から叩きのめされることもあったりしますが。

すんなり終わる人もいるだろう、という腹づもりは全く見当が外れ、全員、目安としていた時間を超過しながら、熱のこもったジャーナリングが続きました。基層の考え方を見直した方が良さそうだったり、根拠を得るためのリサーチが必要だったり、三者三様に、プラン実行に向けてはいろいろなハードルがあるわけですが、一方で、すぐにも取組めそうなプランがあったり、実際に着手に向けて動き出している事業もあったり、参加者のみなさんの意欲やアイディアの力に、とても期待の高まるプレゼンテーションでした。

終了予定時間を2時間超過して、全員のプレゼンテーションが終了。ビジネスブートキャンプは全セッション、すべてのカリキュラムを完遂しました。理論や事例をデリバリーするだけではない、そこに実在する人と問題をモチーフに、実際的なコミュニケーションの中で理論や感覚、知識や考え方を会得して行くプログラムなので、全体の達成度も一人ひとりの達成度も、参加するメンバーの意欲に大きく左右されます。高い意欲を持ったみなさんが参加してくださった今回は、本当に充実した楽しいプログラムになりました。

参加者のみなさんの感想からいくつか。「世の中の見方、必要な志、変革に必要な考え、情報、覚悟を得ることができた」「異業種、多様な年代の方々、いろいろな価値観に触れ、仕事でも多様な見方が出来るようになった」「感覚的に捉えること、創造的に考えることを体得できた」「右脳と左脳を結びつけるワークが面白かった。これをもっとやりたかった」などなど。みなさんの「ちょっと時間が少な過ぎた」という指摘も、意欲の高さと充実感の現われ。次の機会、時間配分は要注意とします。ありがとうございました。